最愛の親が亡くなった時、突然多くの手続きやお金の問題に直面し、戸惑う方も多いのではないでしょうか。
「親が死んだらもらえるお金」は誰もが気になる一方で、種類や手続きが複雑で情報収集に苦労しがちです。
本記事では、健康保険や年金、保険会社から受け取れるお金、さらには相続税や未払い医療費といった、知っておくべきポイントをわかりやすく整理します。
経済的な不安を少しでも減らせるよう、支給されるお金の種類や申請方法を丁寧に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
親が死んだらもらえるお金とその手続き

親が亡くなった場合、遺族が受け取れるお金にはさまざまな種類があります。
それぞれの制度に基づいて受給要件や手続きが異なるため、適切な手続きをすすめることが大切です。
困ったときは市区町村の窓口や年金事務所、勤務先などに相談してみましょう。
健康保険から支給されるお金
親が健康保険に加入していた場合、ご遺族は「埋葬料(埋葬費)」や「高額療養費」の給付を受けることができます。
国民健康保険や会社の健康保険によって、支給される金額や手続きの方法が異なります。
代表的な支給金の種類は以下のとおりです。
- 埋葬料(埋葬費):健康保険組合の場合は通常5万円、国民健康保険の場合は自治体ごとに金額が異なります。
- 家族埋葬料:扶養家族が亡くなった場合など、条件に該当する場合に支給されます。
- 高額療養費:亡くなる前の医療費が高額になった場合、自己負担分を超えた金額が払い戻される制度です。
手続きは保険証や死亡診断書、振込先口座などが必要です。
国や自治体から支給されるお金
国や自治体が支給しているお金には、「遺族年金」や「寡婦年金」、「死亡一時金」などがあります。
これらの制度は親の加入状況や年金の種類によって受け取れる金額や対象者が異なります。
代表的な遺族年金について表でまとめます。
給付の種類 | 主な対象 | 支給条件 |
---|---|---|
遺族基礎年金 | 子のいる配偶者・子 | 被保険者が死亡し、一定要件を満たす場合 |
遺族厚生年金 | 配偶者・子・父母など | 厚生年金加入者が死亡した場合 |
寡婦年金 | 国民年金の妻 | 25年以上保険料納付済の夫が死亡した場合 |
死亡一時金 | 遺族 | 一定条件を満たす場合に一度だけ支給 |
給付金の請求は市区町村役場や年金事務所で手続きが必要となります。
未支給年金の受け取り方法
親が亡くなった月までの年金で、まだ支給されていない分がある場合、遺族が「未支給年金」として請求できます。
請求できるのは配偶者や子、親、孫など、法定相続人に限られています。
請求手続きには、未支給年金請求書、被保険者の死亡診断書、戸籍謄本、続柄を証明する書類、預貯金通帳などが必要です。
手続きは年金事務所や市区町村の窓口で行います。
高額療養費制度の適用
親が入院などで医療費が高額になった場合、高額療養費制度を利用することで、自己負担額の一定限度以上について払い戻しを受けられることがあります。
医療機関での支払いが高額になった際は、申請によって差額が返還されます。
制度を利用するためには、健康保険組合や国民健康保険の窓口で申請書を提出します。
審査の結果、払い戻しが認められると指定口座に振り込まれます。
健康保険料の還付について
親が亡くなった後に健康保険料を多く支払っていた場合、還付金を受け取れることがあります。
例えば、引き落とし後に死亡届を出した場合などが対象になります。
手続きは健康保険証や支払い状況が確認できるもの、死亡診断書、口座情報などをもって市区町村や保険組合の窓口で申請します。
申請後、過払い分が還付されます。
加入先保険からの支給金
生命保険や共済など、親が民間の保険に加入していた場合は、死亡保険金や共済金が支給されます。
保険証券や加入内容を確認し、指定の保険会社へ連絡して申請手続きを行いましょう。
必要書類は、保険証券、死亡診断書(死体検案書)、受取人の本人確認書類、振込先口座などです。
保険ごとに手続きの詳細や認定までの期間が異なります。
勤務先からの支給金や手当
親が企業に勤務していた場合、勤務先から弔慰金や死亡退職金、企業年金などの支給を受けられることがあります。
これらは企業や団体ごとに規定があります。
一般的な支給金の種類と主な特徴を以下にまとめます。
- 弔慰金:勤務中や退職直後に亡くなった場合、会社から支給されることが多いです。
- 死亡退職金:退職金規程にもとづき、遺族に支払われます。
- 企業年金:企業年金規程に沿って、遺族への一時金や年金が支給される場合があります。
申請には死亡届や本人確認書類、企業所定の手続き用紙などが必要です。
健康保険から支給されるお金

親が亡くなった場合、健康保険から遺族に対して一定のお金が支給される制度があります。
この支給金は、加入していた健康保険の種類や亡くなった時の状況によって金額や手続きが異なります。
主に「葬祭費」と「埋葬料」という名目ですので、それぞれの内容や申請の流れについて確認していきましょう。
葬祭費とその申請手続き
葬祭費は、市区町村の国民健康保険に加入していた方が亡くなった場合、その遺族や葬儀を執り行った方が受け取れるお金です。
具体的な支給額は自治体によって異なりますが、一般的には5万円程度が支給されることが多いです。
申請に必要な主な書類は以下の通りです。
- 葬祭費支給申請書
- 亡くなった方の健康保険証
- 葬儀を行ったことが分かる書類(会葬礼状や領収書など)
- 申請者の身分証明書や印鑑、振込先の通帳など
これらの書類を用意し、亡くなった方の住んでいた市区町村の窓口で申請します。
期限は原則として死亡日の翌日から2年以内となっているため、早めの手続きを心がけましょう。
埋葬料とは何か
埋葬料は、主に会社員やその家族が加入している協会けんぽや健康保険組合の場合に支給されるお金です。
被保険者が亡くなった場合に、埋葬を行った方(多くの場合は遺族)へ支払われます。
支給額や手続きの違いをまとめると以下のようになります。
支給名 | 対象となる健康保険 | 支給額の目安 | 申請期間 |
---|---|---|---|
葬祭費 | 国民健康保険 | 約5万円 | 死亡日の翌日から2年以内 |
埋葬料 | 協会けんぽ・健康保険組合 | 5万円(一律) | 死亡日の翌日から2年以内 |
埋葬料申請時にも、葬祭費と同様に以下のような書類が必要です。
- 埋葬料支給申請書
- 健康保険証
- 死亡診断書または死体火葬許可証
- 申請者の通帳や印鑑
会社を通じて申請する場合もあるため、勤務先の総務部門などに確認すると安心です。
いずれの場合も期限内に必要書類を提出し、スムーズに申請手続きを行うことが大切です。
遺族が受け取れる年金と手当

親が亡くなった際、残された家族を金銭的に支えるために国からさまざまな年金や手当の制度が用意されています。
遺族年金や児童扶養手当など、受け取れる金額や条件はそれぞれ異なります。
これらの制度を知っておくことで、万が一の時に慌てず手続きを行うことが可能です。
遺族基礎年金の概要
遺族基礎年金は、国民年金に加入していた方が亡くなった場合に遺族へ支給される年金です。
この年金の主な対象は、亡くなった方によって生計を維持されていた18歳未満の子どもや、子のいる配偶者です。
年金額は毎年見直されており、基本額に加えて子どもの人数によって加算があります。
たとえば、2024年度は、配偶者と子1人の場合、基準額は約780,900円で、2人目以降の子には1人につき加算されます。
受給者 | 金額(2024年度) |
---|---|
配偶者+子1人 | 約780,900円 |
子2人目以降(1人あたり) | 約224,700円加算 |
受け取れるかどうかは、亡くなった方が国民年金保険料を所定期間納付しているかなどの条件もあります。
遺族厚生年金の受給条件
遺族厚生年金は、会社員など厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。
受給できる主な遺族は、配偶者、子、父母、孫などです。
主に下記の条件を満たしている場合、遺族厚生年金を受け取ることが可能です。
- 亡くなった方が厚生年金に加入していた期間がある
- 受給者が配偶者や18歳未満の子どもである
- 父母や孫も一定の条件を満たしていると対象になる
遺族厚生年金の金額は、亡くなった方が厚生年金に加入していた期間や報酬に応じて決まります。
遺族基礎年金と併せて受け取れるケースもあるため、両者の違いを理解しておくことが大切です。
寡婦年金の対象者と申請方法
寡婦年金は、国民年金に加入していた夫が亡くなった場合で、一定条件を満たした妻がもらえる年金です。
主な対象者は、夫によって生計が支えられていた、婚姻期間が10年以上の妻となります。
ただし、年金を一度も受け取らないまま夫が亡くなった場合など限定されています。
申請方法は所定の書類を準備して、市区町村の役所や年金事務所で手続きします。
申請の際には、以下のような書類が必要です。
- 死亡診断書または死亡届
- 年金手帳
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票
- 申請者の印鑑や身分証明書
寡婦年金は60歳から65歳になるまでの間に支給されますが、遺族基礎年金など他の年金との併給はできませんのでご注意ください。
児童扶養手当の詳細
児童扶養手当は、18歳未満の子どもを養育するひとり親家庭や、親が死亡・離婚した家庭などに支給される手当です。
遺族年金とは異なり、地方自治体から支給され、年3回、決まった日に振り込まれるのが特徴です。
児童扶養手当の支給額は、所得や子どもの人数によって異なります。
たとえば、子ども1人の場合の満額は月額44,140円(2024年度)ですが、2人目からは加算があります。
手当の支給には、住民票や所得証明書、戸籍謄本などの書類が必要です。
詳しくはお住まいの市区町村役所で確認し、申請手続きを行いましょう。
保険会社から受け取ることができるお金

親が亡くなった場合、保険会社からお金を受け取れるケースがあります。
主に生命保険に加入していた場合、契約内容に応じて一定の金額が支払われます。
死亡保険金や死亡給付金など、契約によってもらえるお金の種類や受取方法は異なります。
どの保険が対象か、契約内容や手続きについてしっかり確認しておきましょう。
死亡保険金の受け取り方
生命保険に加入していた場合、被保険者が亡くなると指定された受取人が死亡保険金を受け取ることができます。
受け取るためには、保険会社に対して請求の手続きを行う必要があります。
- 保険証券
- 死亡診断書(または死体検案書)
- 受取人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- 銀行口座情報
これらの書類を準備した上で、保険会社に連絡し所定の請求書類を提出します。
書類に不備がなければ、手続き後1週間から2週間程度で指定口座に振り込まれるのが一般的です。
受け取れる金額は、保険契約ごとに異なるため事前に確認しておくと安心です。
死亡給付金とは?
死亡給付金は、死亡保険金とは異なる種類の給付金です。
主に共済などの保険や一部の医療保険、年金保険において、被保険者が亡くなった場合に支払われるお金を指します。
支給元 | 対象となる保険 | 給付金名 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
民間保険会社 | 終身保険・定期保険 | 死亡保険金 | 契約額に基づき支払い |
共済 | 共済保険 | 死亡給付金 | 組合員向け、掛金が安い |
団体・企業 | 団体保険 | 弔慰金・死亡見舞金 | 勤続年数や役職による |
それぞれ契約先や内容によって給付金の名称や支払い条件が異なりますので、加入している保険や共済の内容を事前に確認しておくと良いでしょう。
万が一のときにスムーズに給付金を受け取れるよう、必要書類や連絡先も控えておくことをおすすめします。
相続税や医療費など他に支払うお金について

親が亡くなったときには、受け取れるお金だけでなく、支払う必要のあるお金も存在します。
代表的なものが相続税や医療費の未払いなどです。
これらについて事前に正しい知識を持っておくことで、手続きがスムーズに進み、不要なトラブルを避けることができます。
相続税の基本と計算方法
親が亡くなった際に、一定額以上の遺産を取得した場合には相続税が課せられることがあります。
まず、相続税がかかるかどうかの判断基準となるのが「基礎控除額」です。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
たとえば法定相続人が2人の場合は、3,000万円+600万円×2=4,200万円までが非課税となります。
この基礎控除額を超える遺産があると相続税が発生し、税額は取得した遺産の金額や相続人の関係性によって異なります。
相続税の計算は一見複雑に感じますが、基本的には下記の手順で進めます。
- 遺産総額を計算する
- 基礎控除額を差し引く
- 法定相続分で按分する
- 相続税速算表を使い、各相続人ごとの税額を計算する
- 控除や加算を反映した最終的な納付額を算出する
以下の表では、相続税の税率と控除額の一例をまとめています。
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
~1,000万円 | 10% | 0円 |
1,000万円超~3,000万円 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円 | 30% | 700万円 |
正確な相続税の計算には、専門家に相談することもおすすめです。
医療費の未払いとその解決策
親が闘病していた場合、亡くなったあとの医療費が未払いとなっていることも少なくありません。
医療機関から請求が届いた場合、基本的には相続人が連帯して支払う責任を負うことになります。
もし医療費の額が大きすぎて一括で支払うのが難しい場合や、どうやって支払えば良いか分からない場合は、まず医療機関に相談してみましょう。
分割払いなどの対応をしてくれる場合もあります。
また、医療費の未払いが多いケースでは、相続財産と照らし合わせて「相続放棄」や「限定承認」といった特別な手続きができることもあります。
相続放棄をすると、相続財産だけでなく、負債(未払い医療費など)の支払義務も免れることができます。
この場合、相続開始(親が亡くなった日)から3か月以内に家庭裁判所に申し立てが必要です。
手続きや判断が難しい方は、専門の弁護士や司法書士などに早めに相談することをおすすめします。
親が死んだらもらえるお金に関する最終考察

ここまで、親が死んだ際にもらえるお金についてさまざまな観点から解説してきました。
遺族年金や死亡退職金、生命保険の受取金など、親族が受け取れるお金にはいくつか種類があり、それぞれ条件や手続きが異なります。
また、申請を忘れてしまうともらえないお金も多いため、早めに情報を集めて正しい手続きを進めることが大切です。
一方で、相続税や手数料、未払いの費用など支払う側になるお金もあるので、総合的な視点で考えることも求められます。
親が亡くなることで心の整理がつかない中、事務的な手続きが負担になることも少なくありませんが、まわりと協力し合いながら少しずつ進めていきましょう。
今回ご紹介した内容を参考に、それぞれの状況に合わせて適切に対処し、遺族として安心して前に進めるようサポートにつなげてください。