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納棺の儀とは何かや手順・副葬品の選び方まで徹底解説|後悔しないためのマナーとポイント

白い手袋をした係員が白いユリの花束を棺の中に丁寧に納める様子
ご遺体の管理・ケア

大切な人との最期のお別れにあたり、「納棺の儀」という言葉を耳にしても、その意味や流れを詳しく知る機会はあまり多くありません。

いざ自分が立ち会う立場になると、何をすればいいのか、どんなマナーがあるのか、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、納棺の儀の目的や手順、服装のマナー、副葬品の選び方まで、分かりやすく解説します。

納棺の儀に関する疑問や不安を解消し、心を込めて故人を見送るお手伝いができれば幸いです。

これから、納棺の儀について一緒に学んでいきましょう。

納棺の儀とは何か

白い棺に金具の装飾が施された葬儀の風景

納棺の儀は、故人を棺へ納める日本の伝統的なセレモニーです。

葬儀の一環として執り行われ、遺族や親族が立ち会いながら最後のお別れのひとときを過ごします。

ご遺体を清めた後、故人のお気に入りの衣服を着せたり、思い出の品やお花を一緒に納めたりすることが多いです。

この儀式は、故人への感謝と冥福を祈る気持ちを表現する大切な時間です。

納棺の儀の意味と目的

納棺の儀には、故人の魂を穏やかに見送るための意味があります。

家族や親しい人々が集まり、心を込めて故人に別れを告げることで、残された人々の気持ちの整理や心の準備にもつながります。

また、ご遺体をきちんと整え、礼を尽くして旅立ちをお手伝いする行為は、古くから日本人が重んじてきた礼儀や思いやりの表れです。

  • 故人に敬意を表す
  • 遺族の心の区切りとなる
  • 宗教や地域の風習を大切に守る

このように納棺の儀は、社会的にも、家族の間でも非常に大事にされる儀式です。

納棺の儀にかかる時間と費用

納棺の儀にかかる所要時間は、一般的に30分から1時間ほどです。

内容や規模、ご遺族の希望によって前後することもあります。

内容 目安の所要時間
ご遺体の清め・整え 15~20分
納棺(遺体を棺に納める) 10~20分
お別れの儀式 10~20分

費用は、葬儀会社や依頼するサービス内容によって異なりますが、相場は3万円から10万円程度です。

納棺師による専門的な納棺の儀を希望する場合には、追加料金やオプションが発生することもあります。

プラン内容や地域によって差があるため、事前に詳細を確認することが大切です。

納棺の儀の具体的な手順

遺族が故人に最後の祈りを捧げている瞬間

納棺の儀は、故人との最期のお別れを丁寧に行う大切な儀式です。

故人に感謝を伝えるとともに、遺族が心を落ち着けるための時間にもなります。

ここでは、納棺の儀の一般的な流れや具体的な手順について紹介します。

末期の水を行う

末期の水は、故人の亡くなった直後に行う儀式です。

脱脂綿やガーゼなどに水またはお湯を含ませ、ご遺体の口元を優しく潤します。

近親者や親しい家族から順番に行うことが一般的です。

「喉の渇きを癒やしてほしい」という思いを込めて、心を込めて行います。

  • 脱脂綿やガーゼを準備する
  • 水または白湯を用意する
  • 口元、唇、場合によってはまぶたを湿らせる
  • 家族全員で順番に行う

湯灌でご遺体を清める

湯灌(ゆかん)は、ご遺体の全身をお湯できれいに拭き清める伝統的な作業です。

専門のスタッフが関わるケースが多く、ご家族も手伝いながら行うこともあります。

衛生面を考慮して、最近ではシャワータイプやドライシャンプーを使うことも増えています。

準備するもの 目的
清拭用タオル 身体をやさしく拭く
シャンプーや泡など 髪や顔も清める
着替え・防水シート 衣服交換・寝具の保護

死装束を着せる

死装束(しにしょうぞく)は、故人を旅立たせるための特別な衣装です。

仏教では白装束が一般的で、経帷子(きょうかたびら)と呼ばれる着物や、手甲、脚絆、頭巾などを着せます。

宗派や地域によって若干の違いもありますが、家族の手で丁寧に着せることが大切です。

生前のお気に入りの服を準備する場合もあります。

死化粧を施す

死化粧(しにげしょう)は、故人のお顔を整え美しく送り出すために行う施術です。

髪型を整え、顔色を自然に見せるために薄くお化粧します。

口紅やチークを使うこともあり、必要に応じて髭剃りや髪のカットもおこないます。

近年では、専門の納棺師がご遺族の希望を聞きながら故人の生前に近い姿に整えてくれます。

ご遺体を棺に納める

死装束や死化粧が整い、ご家族で心を込めて故人をお見送りします。

スタッフや家族でご遺体を優しく持ち上げ、用意したお棺に丁寧に納めます。

体勢を整えたら、顔に白い布を添えることもあります。

最後のひとときとして、家族や参列者が手を合わせてお別れの言葉をかけます。

副葬品を棺に納める

副葬品は、故人の思い出の品や大切にしていた品を棺に入れることを意味します。

生前愛用していた眼鏡や写真、手紙などが一般的です。

火葬できない物(ガラス・金属・分厚い本)や、大きすぎるものは避けます。

宗教や斎場のルールによって入れられない物もあるので、必ず事前に確認しましょう。

  1. 入れてもよい副葬品を確認する
  2. 家族で思い出の品を選ぶ
  3. 火葬場スタッフにも確認する
  4. 棺の中に丁寧に収める

このように、故人への思いを形にして最期の旅立ちを見送ることが納棺の儀の大切な役割です。

納棺の儀に立ち会う人と服装マナー

白い棺に金具の装飾が施された葬儀の風景

納棺の儀は故人を見送る大切な儀式であり、参列する方の振る舞いや服装も重視されます。

マナーを守ることで、遺族や参列者同士が気持ちよく過ごせます。

立ち会うべき人の範囲

納棺の儀に立ち会うのは、基本的に家族や近しい親族です。

場合によっては、故人と特別な関係があった友人や知人が招かれることもあります。

一般的な範囲としては、下記の人たちが該当します。

  • 配偶者や子ども、両親などの直系親族
  • 兄弟姉妹やその配偶者
  • 特別に親しかった友人や親族

招待された場合をのぞき、基本的には親族以外は遠慮するのがマナーとされています。

ご遺族の意向を最優先にし、無理に立ち会うことは控えましょう。

葬儀場での服装の基本ルール

葬儀場での納棺の儀では、フォーマルな服装が求められます。

ビジネススーツや喪服が好ましく、アクセサリーや強い香水は控えましょう。

具体的な服装の例を表にまとめます。

男性 女性
黒のスーツ、白いシャツ、黒いネクタイ 黒のワンピースまたはスーツ、控えめなアクセサリー
黒い靴・靴下 黒いパンプス、肌色か黒のストッキング

カジュアルな服装や、派手な色柄は避けるのがマナーです。

また、宗教や地域によって細かい違いもあるので、事前に確認しておくと安心です。

自宅での服装の注意点

自宅で納棺の儀が行われる場合、葬儀場ほど厳密なフォーマルさは求められませんが、落ち着いた服装を心がけましょう。

普段着でも構いませんが、明るい色や派手な柄は避け、清潔感のある服装を選びます。

迷ったときの基本的なポイントをリストでまとめます。

  • 黒・紺・グレーなど落ち着いた色合いを選ぶ
  • 華やかなデザインのものは控える
  • 動きやすく整った服装(スラックスやシャツ、シンプルなブラウスなど)
  • スリッパや靴下も無地や落ち着いた色で揃える

地域や家族の習わしもあるため、事前に確認しておくと安心です。

納棺の儀における副葬品の選び方

白い布に包まれた棺と供花が飾られた葬儀の場面

納棺の儀では、その人らしい旅立ちを願って副葬品を棺に納めます。

しかし、すべてのものが棺に入れられるわけではなく、火葬場や自治体によってルールがあります。

ここでは、納棺の儀における副葬品の選び方のポイントをご紹介します。

棺に入れることが許可されているもの

副葬品には、故人が愛用していた品や思い出の品を入れることが多いです。

一般的に許可されているものの例を以下に示します。

  • 手紙や写真
  • 小さなぬいぐるみや布製品
  • お花や折り紙
  • 好きだった本やノート(少量)
  • 愛用していた眼鏡やアクセサリー(プラスチック製など燃える素材のみ)

入れる際は大きさや量に配慮し、燃えやすい素材のものを中心に選びましょう。

副葬品の内容に悩んだ場合は、葬儀会社や火葬場に相談するのがおすすめです。

火葬に適さないため入れるべきでないもの

火葬時に事故やトラブルの原因となるものは入れてはいけません。

代表的な例を以下の表にまとめます。

入れてはいけないもの 理由
ガラス製品・陶器 高温でも溶けず、遺骨に混ざる恐れがあるため
金属(指輪・腕時計等) 高温で変形し、火葬炉の故障原因になることがある
ペースメーカーや電池類 爆発の危険があるため
大量の本や衣類 燃え残りや煙の発生につながる恐れがあるため

特にペースメーカーやライター、スプレー缶などの危険物は絶対に避けてください。

誤って入れてしまうと、火葬場の方に大変なご迷惑をおかけすることになります。

事前に届け出が必要な副葬品

一部の副葬品については、火葬場や自治体へ必ず事前に届け出が必要な場合があります。

以下のようなものは注意しましょう。

  • 医療器具(義歯・義眼・金属体内留置物)
  • 特殊な副葬品(例:骨壷以外の容器に納める場合など)
  • 宗教的な理由で特別な品を納める場合

届け出が必要な副葬品

品目 届け出の理由
義歯・義眼など医療器具 金属含有で火葬炉への影響があるため
宗教・儀礼用特別品 炉の負担や法的な問題が発生する可能性があるため

不明な点は火葬場や葬儀社に確認し、事前にルールを守って用意することが大切です。

納棺の儀の文化的背景と形式の違い

黒いベストを着た葬儀スタッフが白いユリの花束を棺に収める瞬間

納棺の儀は、故人との最後の別れを大切にする日本独自の習慣として広く根付いています。

この儀式は、宗教や地域によって実施方法や意味合いが異なります。

家族や関係者が一堂に会し、故人を清め、丁重に棺へ納める一連の流れを通して、感謝や安らかな旅立ちへの思いが込められます。

宗教ごとに納棺の儀のルールやマナーが異なるため、その違いを正しく理解することが大切です。

仏教における納棺の儀

日本の葬儀の多くは仏教の習慣に基づいて行われており、納棺の儀も仏教の教えを反映した形式で実施されることが多いです。

一般的には、湯灌と呼ばれる清めの儀式を済ませた後、故人に白装束を着せます。

遺体には、頭や口元に白い布を当て、身支度を整えます。

僧侶が読経を行いながら、家族が協力して丁寧に棺へと納めます。

仏教の納棺には、生前の煩悩や穢れを清め、成仏への道を願う意味が込められています。

  • 白装束の着付け
  • 旅支度の副葬品(わらじ、杖など)を棺に納める
  • 読経と焼香への参列

宗派によっては納棺の手順や使う道具が異なる点もあります。

キリスト教および神式の納棺の儀

キリスト教の納棺儀式は、仏教とは異なる落ち着いた雰囲気のもとで行われます。

故人は清潔な平服やドレスを身につけ、家族や親しい人たちが集まって祈りや賛美歌が捧げられることが多いです。

司祭や神父が祈祷を行い、故人を天へ導くよう願います。

宗教 納棺時の服装 主な儀式
キリスト教 平服、ドレス 祈祷、賛美歌
神式 白装束または和装 玉串奉奠、清め

神式(神道)では、故人に白装束や和装を着せ、家族が故人の魂の浄化と安らかな旅立ちを願います。

神職による祝詞奏上や玉串奉奠が行われ、仏教と同様に清めや感謝の意が込められています。

宗教の違いがあるものの、どの形式も敬意をもって故人を送り出す気持ちは共通しています。

納棺の儀に関するよくある質問

喪服の女性が棺の前で手を合わせている姿

納棺の儀は、故人を見送る大切な儀式であり、多くの方から悩みや疑問の声が寄せられます。

ここでは、納棺の儀に関するよくある疑問について分かりやすく解説します。

納棺には必ず参加しなければならないか

納棺の儀への参加は義務ではありません。

ご遺族や親しい方が故人との最後のお別れをするために参加することが一般的ですが、気持ちが整わない方や事情がある場合は無理に参加する必要はありません。

体調や心情が優れない場合は、静かに見守る形や、後で改めてお別れの気持ちを伝える方法もあります。

不安な方は、あらかじめご遺族や葬儀社に相談しておくと安心です。

  • 家族や近親者が中心となることが多い
  • 事情がある場合は欠席も可能
  • 心の準備ができていない方は無理をしなくてよい

納棺の際に必要な持ち物や心づけについて

納棺の儀に参加する際、特別な持ち物を用意する必要は基本的にありません。

多くの場合は、葬儀社が必要なものを準備してくれます。

ただし、ご遺体と一緒に棺に入れたい思い出の品(手紙や写真など)がある場合は、事前にご遺族や葬儀担当者に相談しておくとスムーズです。

持ち物 必要性 備考
思い出の品 必要に応じて 副葬品として入れる場合は事前に相談
お数珠 必須ではない 希望により持参
心づけ 地域や慣習による 葬儀社に確認が安心

心づけは、担当スタッフや納棺師へ渡す場合がありますが、金額や有無は地域や葬儀の形態で異なります。

不明点がある場合は、事前に葬儀社にたずねてみましょう。

服装については、平服や落ち着いた色合いの服装が好まれます。

納棺の儀を通じて故人を送る意味を考えよう

納棺の儀を執り行う葬儀スタッフが故人に白装束を着せている光景

納棺の儀は、故人と最後のお別れをする大切な時間です。

ご遺族はもちろん、親しかった方々が集い、故人の安らかな旅立ちを願います。

ただ形式的に進めるのではなく、故人の人生や思い出に想いを馳せながら行うことで、心の整理や悲しみを和らげる大切な役割も担っています。

家族や友人が納棺に立ち会うことで、故人の人生を振り返り、それぞれの心の中にしっかりと刻むきっかけとなるでしょう。

大切な人を見送ることで、遺された人々の間に新たな絆や感謝の気持ちが生まれることもあります。

納棺の儀は単なる儀式ではなく、故人と向き合い、未来へ一歩踏み出すきっかけにもなるのです。